誰がためにうましかさん


さて、明日は朝も早よから社会人サークルの試合
―なんじゃけど、ウチのチームには普段と違うちょっくら特殊な事情が噛んでる訳で。
それは俺と同い年の2人がこの試合を最後に就職のためにチームを抜ける事。




…こう言っちゃうと凄くあっさり聞こえるかもじゃけど、
この2人とは年が同じって事もあって色々と仲良くさせて貰ってたんだね。
特に試合会場には俺の車にこの2人が乗って行く事が多く、
その車内で他愛も無い話をしたり試合後に反省会みたいなノリで、
ファミレスで色々と食べながら試合の事を話した事が思い出される訳で。


そんな彼らの送別会がこないだあって。
その締めに1人は「ここに来なかったらバスケ人生が終わっていただろう」と言った。
もう1人は「またここに来る機会があれば一緒にやらせて下さい」と言った。
その時、その言葉は飲み会の席じゃったけん凄く軽く聞こえたけど、
今思えばそれぞれの重い思いがあったのかな、なんて思う訳だ。


実際この2人は毎週2回ある練習にはほぼ来ていた。
平日の夜、学生にしてもバイトや勉強で忙しいのに、だ。
そしてそこで俺らは彼らのひたむきな姿勢を見てたし、
何より一緒にプレイしててそのひたむきさは感じたんじゃないかなって思うんだ。
っちゅーか俺はそれをひしひしと感じていたんだね。








…だからこそ勝ちたい。高校からバスケを始めて7年。
所詮地区予選敗退レベルながらそれなりに試合数をこなしてるけど、
こんなにも"誰かのため"に勝ちたいって思ってる試合も初めてだ。
今までは「県大会出場だ」とか何とかかんとか言ってて、
何だかんだって結局は"自分自身のため"でしかなかった。
その"何のため"ってのが自分自身びっくりする位今回は違うんだ。

そーいや社会人になって"誰かのために"だなんて思ったのも、
今回のこの試合に対してが初めてかも知れない。
年を取る毎に現実を知って胸の奥はすっかり冷めてきてっけど、
ほんと、こんなにアツい思いを出来るたぁ思ってなかったよ。
そんな事を思えばアイツらや今のサークルには結構感謝してんです。
バスケが出来る環境を提供してくれてとか、そんな意味じゃぁ無く。




だから神様、もう少しだけアイツらと一緒にバスケをやらせてくれませんか。
だから神様、もう少しだけアイツらと一緒にコートに立たせてくれませんか。
だから神様、明日は少しだけウチのシュートがよく入る設定にしといてもらえませんか。
だから神様、明日は相手のシュートがあんま入らない設定にしといてもらえませんか。



営業やってる影響か知んないけど変にリアリストじゃったりするから、
神頼みだなんてのはあんま好きじゃないけど、今晩だけは神様に祈らずには居られないね。